地下都市ブルーシティーの秘密

北方新社 地下都市ブルーシティーの秘密
小倉尚継

豪雪の青森市の地下に密かに建設された常夏のブルーシティーの危機。明晰小原探偵の推理と三美女とのロマンの結末は-。
1,300円+税

合唱指導で活躍する著者が贈る「矢絣が飛んだ」に続く第2作品集。誰も死なせない、ハッピーな推理ファンタジー。

短編 おぶさりてぇの怪 童話 クマとミー他2編も収録

前作「矢絣(やがすり)が飛んだ」には、今回の「地下都市ブルーシティーの秘密」の探偵小原が活躍している「人魚キララの事件簿」も併載されています。



第一章 雪に閉ざされた町

【青森市は二月二十日現在、積雪百七十八センチ、十八年ぶりの大雪となっています。青森県内で雪の重みで倒壊した家屋十五棟、雪による死者は十名にものぼり、今後、山間部を中心とした雪崩、りんごの木の枝折れなどが心配されています】

 テレビでは青森市の大雪情報が流されていた。ローカルだけでなく、全国放送でも取りあげられ、青森市に住む私立探偵・小原誠にも、東京都北海道、それに九州の知人から見舞いの電話が入っていた。実際、吹雪の街は、雪の煙幕を張ったように視界が悪く、道の両側に寄せられた雪がうず高く積まれ、大通りを走る車はのろのろ運転、小路に入ると、あちこちで立ち往生している車が見られた。
 住民は晴れ間を見つけては雪捨て作業に精を出した。雪捨てとはいっても、市が確保した広場に、山のように次々と重ねるだけで、これがまた大変に骨の折れる仕事であった。それでも広場がある地域は恵まれている方で、そうでない地域では、隣家と不仲になりながら、どこか隙間を見つけて雪を積むしかなかった。体の不自由な人や、一人暮らしの老人宅には、地域のボランティアの人や自衛隊員が出動し、屋根の雪下ろしと生活路の確保に汗を流した。
 深夜にはブルドーザーやロータリー車が道路の雪を削り取り、何台ものトラックがその雪を運んで海へ走った。それらの費用は莫大な額で、市では今年度の予算を使い果たし、補正予算を組んで何とか対処していた。
「こんなに続けて雪が降れば、もう捨て場が無くて、雪の中に埋まっているしかないね」
と、住民は暗い空を見上げて、嘆きの言葉を交わしていた。
 どうしたわけか今年の冬は、全国的に、その始まりから寒波に見舞われていた。
 まず、十二月のうちに、鹿児島・広島・名古屋などが、大雪により生活が大きく乱され、新潟県では六十五万戸が停電した。山形では突風により、あの忌まわしいJR羽越線の特急脱線事故が起きてしまった。
 更に、一月に入ってからは北陸を中心に降雪が続き、新潟の津南町では四メートルの積雪を記録、ある集落は孤立状態に陥ってしまった。
 雪による全国各地の死者は、一月半ばで九十人にも達していた。
 さて、青森市の雪のピークはやはり二月、この月に入ってからは殆ど休むことなく雪が降り続き、ついに全国ニュースで紹介されることになったのである。
 青森市堤町に事務所を持つ私立探偵・小原誠は、車を自宅に置いたまま、徒歩で事務所に通っていた。駐車場の雪捨てがままならなかったからである。
「今日もまた雪か、人が住むような所でないみたいだね。昔の縄文人たちは、よくもこの地に住んでいたものだよなあ」
と、独りごとを言って、自分でいれたお茶をすすった。
 青森市三内丸山の縄文遺跡は、全国的に知られていた。その出土品の多さと、集落の規模の大きさが、注目の的となっていたのである。しかし、いかに昔は温暖だったとはいえ、所詮は北国、さぞかし寒く不自由な生活をしていただろうということは、想像に難くない。
「もう午後二時か、少し早いが今日は事務所を閉めようかな、こんな日は仕事依頼なんかこないと思うよ」
 名秘書・人魚キララが海へ帰ってからは秘書を置かず、独りで仕事をしている小原は、いたって気楽なものだった。帰り支度をしようとして、念のためメールを開いてみると、わずかに一通だけ、見知らぬ差出人から届いていた。

〈続きは本書で!〉

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