日曜の朝に

序より(執筆者を代表して 笹森 記)

日曜の朝、新聞を開くと、新聞人以外の時事論評を読むことができた。本書の後書きにその人名が書かれている。坂田二郎氏や弥富敬之助氏などの著名人だった。口当たりの良い言葉でなく、手厳しく辛辣な評論に接すると、その小気味よい、うがった提言に溜飲の下がる思いをしたものである。

どうしてそうなったのか、そのコラムに私たち(笹森、西東、森田)に執筆することが求められたのである。もし、その立場に立たされたら、誰もが尻込みするだろう。時評であるので、現在の政治・経済・歴史・文化・社会事象へ即刻に対応しなくてはならない。新聞は公器であるので、節操を守り、良識をもって論じなければならない。

気の利いた物の見方は、小賢しくなる。故意に理屈をこねまわすと、いやみになる。批判のみに走ると、自分のひねくれた性格が露見しかねない。お断りするのが一番だ。

依頼してきた文化部長、論説員の弁舌が優れていたのだ。断りきれず、とにかく二年間、私たちは書いてしまったのである。

執筆した三人は大学の教員であり、学問・教育を任務とする。こんな文を読んだことがある。「研究室や廊下の隅に置かれた書架に埃を被って眠っている論文のいかに多いことか。それらは塵芥と同じである」と。また、前任校の或る教授が次の様に言った。「業績作りのために書いた論文が並べられている本箱には、指導した卒論・修論も収蔵されている。その前を通る度に、何とも言えぬ後ろめたさを感じる」と。

このように書いていくと、自分も、そのような愚かさに加担した犯人の一人だろうと言われそうである。残念ながら、全く否定もできない。何故そうなるのか。そこに、よしんば学問的成果が含まれていたにしても、世に積極的に問わず、審判を受けていないからではなかろうか。若し、現実から逃避し、象牙の塔にこもるだけであるのなら、無益な作業を大学人がしていることになる。

「随想」として本書を出版するものの、学問の府にある者が学会誌や研究紀要以外のメディアで、日頃の思いを吐露するのはそれなりの意義があるだろう。アカデミックな隘路を経て提言するのに増して、人々に直接伝達できる。限られた研究仲間へのメッセージより、広く知らしめることになる。

その意味においては、執筆を断らなくてよかったのだ。機会を与えてくれた新聞社に感謝しなければならない。日曜ののんびりした朝に読むべく、時事を念頭に由無よしな>し事を書いた。求められた「辛口」は十分ではなかったかもしれない。また、現時点での刊行には多少の不安と危惧がないわけではない。時宜を逸していないか、提言が的外れで独断的ではなかったのかなどと。

著者の三名はそれぞれの連載記事の末尾に、総括として執筆意図、関心の分野、提言、反省などを記している。この小著を手にする人々が、私たちと共に世論を高め、英知をもってその時その時の社会の出来事を解決して行く施策を提示してくれるのなら幸甚である。

「目次」より

  • 執筆者紹介・笹森建英
    景観はだれが壊し、誰が守るのか / 嘘の嘘は真実であるという嘘 / 学校五日制に思う / ドイツのテレビ番組「イタコ」 / 秋田県人にならいたい / 変化の速度はまたたく間 / くやしくないのか / ストロー現象 / 茶会に出向き文化祭を思う / 福祉国家とブタ飼育場 / 時の遅速 / 寄せ集めのザル法 / 雛祭り / 愛国心 / 赤いカーネーションを贈られて / 観光と地域文化 / ネプタの季節に / 魂の抜けた文化 / 二年間の随想を振り返って〈上〉 / 二年間の随想を振り返って〈下〉
  • 執筆者紹介・西東克介
    県教育長の責任とは / 集団主義と政治権力の弊害 / ずぐり(コマ)まわしとコミュニケーション / 県教育長に人を裁く資格なし / なぜ「天下り」が問題なのか / 教育改革と私の耳学問 / 独断で自衛隊を軍隊にするな! / 民主主義と学校の生徒会活動 / 切るな!五所東の紡いだ糸を / 全国から青森に不登校生徒を! / エリートの危機こそ国の危機 / 全国へ本気でリンゴの旬の味を / 掃除で学級の基盤づくりを! / 組織の責任者と部下 / 3年後に正式の教員採用を / この国の課題と「自立学」 / 「飲み屋さん」から学ぶこと / あえて小泉首相を評価する / おまかせ民主主義から脱皮を / 教員「職人集団」で能力向上を / 教員能力向上に拠点校を / 〈紙面批評〉陸奥新報の魅力と弱点 / 〈紙面批評〉「津軽ブランド」の探求 / 〈紙面批評〉市長選の記事を読んで / 〈紙面批評〉「社説」に真骨頂あり / 〈紙面批評〉地元スポーツ記事に魂を / 〈紙面批評〉専門職の人々への「応援歌」 / 〈紙面批評〉選挙結果後の追跡も / 〈紙面批評〉地域文化と国家 / 研究・「政策」・教育と「時事随想」・「社内報・紙面批評」執筆の関係
  • 執筆者紹介・森田 猛
    いまの時代は特別か? / 年賀状に思う / どこに行けば良い仕事が・・・ / 交通マナーはなぜ悪い / 何となく良さそう / 私たちの「年齢」 / お急ぎですか? / わかりません / ゆったりと長い時間軸を / 最大値ではなく最適値を / 無用の用 / 良いものを長く使いたい / 受容する文化、日本の感性 / スタイルのない時代に / 若く見える? / 人間関係の難しさ / 刈り取る人から種蒔く人へ / ワタシの良さがわからない? / 占いはなぜ生き残る / 「公私混同」の勧め / 空気を読まない / 「自由」を求めて
  • 「日曜の朝に ―辛口一筆 時事随想」に寄せて(前陸奥新報社論説室長 鳴海静孝)
  • 編集を終えて(西東克介)

著者略歴

笹森 建英

弘前市生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。アメリカ合衆国ニューヨーク州マンハッタン音楽学院修士修了。
ハワイ大学大学院修士(民族音楽学)修了。元弘前大学教育学部教授。元青森県文化財保護審議会委員。
現在、弘前学院大学社会福祉学部・文学部研究科教授。
民俗音楽を調査・研究。著書は『津軽箏曲郁田流の研究』(共)、『巫女の習俗・青森県』(共)など。

西東 克介

一九五九年、高知県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。弘前学院大学社会福祉学部・准教授。弘前大学・農学生命科学部・教育学部・二一世紀教育・大学院教育学研究科の各非常勤講師。
研究分野:政治学と行政学の研究方法で日米の教育行政を研究。官僚制と日米の文化(個人主義・集団主義)の関係を研究。
近年仕上げた論文:「我が国公教育・就業組織と集団主義文化の再生・変容―『挙国一致』の指向・行動パターンの再生産―」(寄本勝美・辻隆夫・縣公一郎・編著『行政の未来』成文堂・二〇〇六年。)/「アメリカ教育長のアドミニストレーション能力」(『弘前学院大学社会福祉学部研究紀要』第八号・二〇〇八年。)

森田 猛

一九六一年、大阪市生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士課程後期中退。現在、弘前学院大学文学部准教授。
専攻は西洋史学、とくにヨーロッパ近代史学史。
共著書に『スイスの歴史と文化』(刀水書房)、『ネイションとナショナリズムの教育社会史』(昭和堂)など。

ご購入

北方新社 日曜の朝に
笹森建英、西東克助、森田猛(著)

2003年〜2007年に地元紙に掲載されて好評を博した辛口時事随想。政治、経済、歴史、文化、社会事象・・・。多岐に渡って大いに斬る痛快な一冊。碩学の提言に耳を傾けたい。
1,000円(税込)

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